少子化の時代に大学数が増えている要因

最近は多額の奨学金を借りて大学や短大に通っている学生が多くなってきていますが、これは失われた20年といわれる長期的な不況により、親の失業などの影響で学費が捻出できなくなってきている事情があります。

このような学生の経済事情に対応するため、育英会では10年以上前から有利子である第二種貸与額の割合を増やして対応しております。その結果、ここ10年で貸出残高が約8,500億円規模にまで急激に増加してきましたが、この増えた残高はそのまま学生の借金になっておりますので、卒業後も返済に苦労している社会人が多い状況になっているわけです。

昔は卒業後に教育機関で教員職にでもつけば、奨学金は免除されるなどの仕組みもありましたが、現在ではそのような制度は廃止され、状況が一変しております。大学院生ともなると、1,000万円程度の残高があるケースの学生も多いようです。

また、就職しても企業の給与が伸び悩んでいるため、20代~30代は奨学金の返済で生活に余裕のない社会人も多いです。かつては高額所得者の花形といわれた弁護士の仕事でも、年収100万円未満の低所得者が20%にのぼるといわれる時代になりましたので、学校を優秀な成績で卒業しても返済が困難になっている事情があります。

それでは、この急激に増加した第二種奨学金はどこにいったのかといえば、当然、奨学金なら学費に充てられているわけですので、各教育機関の収入になっているはずです。

政府の統計によれば、少子化の時代に小学校などの数が減少している一方、大学の数に限っては、2003年の702校から2012年の783校へとむしろ増加している傾向にあります。人口が減少している分、入学者数が減少しているかといえばそうでもなく、進学率が上昇したことにより、入学者数はほぼ横ばいで推移しているわけです。

本来なら少子化に合わせて大学の数を減らせば、1校当りの学生数が増え、学生一人当たりの学費負担も安く抑えることも出来たものと思われます。そうであるならば、多額の奨学金で借金漬けになるというような状況にはなっていなかったことでしょう。

少子化の一方で大学数が増えているわけですので、定員割れの状態となってしまっており、各教育機関は学生を募集するのにやっきとならざるを得ません。私立大学などは経営上の問題から、学生の質にこだわっている余裕はないのが実際のところかと思います。

私立大学では設備を充実させて学生を呼び込むもうとした結果、学費は数十年前とは比べようもないほど高くなってきています。サラリーマンの年収はここ40年間で2倍程度しか増えていないのに対し、国公立大学の授業料は約15倍まで増えてきています。

そのつけは、学生が多額の奨学金を背負い込むことで払っていくことになるわけです。学校経営をビジネスとしてとらえる私立大学と金融事業としての第二種奨学金事業、そしてそれに群がる文科省の天下り官僚の存在などが、少子化の時代にも関わらず、大学の数が逆に増加している要因になっているものと考えてよいでしょう。