母子家庭の子供における母親の扶養問題

日本の総世帯数は5,459万世帯(1億2,837万3,879人)ですが、このうち、母子家庭が123万世帯、父子世帯が22万世帯といわれており、片親世帯の合計は145万世帯あると想定できます。

割合にすると3%程度になりますが、このうち、母子家庭に生まれた子供は貧困の連鎖になるケースが多いです。

特に見落とされがちになってしまうのが、子供の扶養もそうですが、将来的には子供による親の扶養という問題が生じてきてしまいます。この子供による親の扶養、特に母子家庭の子供については、国からは何の援助もなく、過酷を極めることになってしまうわけです。

今では離婚時に年金が分割できるようになりましたが、以前まではこのような制度もなく、離婚した母親の老後の年金収入はかなり少ない傾向にあるようです。

【事例その1:北海道在住、独身男性A氏のケース】

Aさんが母子家庭になったのは、高校1年生の時でした。

父親のギャンブルぐせが原因で多額の借金をかかえてしまい、当時はいつも家庭内でのいざこざがたえなかったといいます。しまいには、父親による家庭内暴力へ発展するようになり、離婚する結果となりました。

父親には多額の借金があったため、養育費もわずかばかりしか見込めず、母親の収入のみで貧しい母子家庭を送らざるを得なくなったようです。

その後、Aさんは奨学金2つをゲットし、また祖父からの援助やアルバイトの掛け持ち、さらには足りない分を学生向けの金融で補うなどして、就職氷河期だったものの、何とか大学を卒業して就職することができました。
けれども、30代に入ると母親の扶養問題が頭をかかげることになってきます。

熟年離婚ブームの現在では離婚時に年金の分割が可能になりましたが、当時はそのような制度はありません。専業主婦だった母親が老後にもらえる年金はすずめの涙程度なもので、年金だけで生活することはままならない状況です。

それでも、Aさんが20代の頃は母親の方でもパート収入などがあったため、月5万円程度の仕送りのみで済んでいたといいます。けれども、母親が60代に入り、パート勤めもままならなくなってきた頃から、毎月10万円以上の仕送りが必要になることも多くなっていきました。

そのような折、母親に癌が見つかったことで実家へ戻ることになりましたが、同居することで仕送り分の負担は少しは減ったものの、治療費などでの負担がかさむようになります。

ちょうど、30代も後半に差し掛かったAさんは、その後の将来に不安を感じ、母親の年金を増やさなくては自分の未来がないと感じ、母親の年金額を増やすことに決めました。幸い、自分で立ち上げた会社の役員に母親をあてがい、給与を支払うことで60代半ばでも厚生年金に加入することができたようです。

けれども世間の目は冷たいといいます。イケメン社長のAさんはいわゆる高額取得者の部類に入り、人口比率上位2%に入る高額な納税をし、親の扶養に加え、祖母を扶養しているにも関わらず、親と同居していることでパラサイトシングルなどと周囲からは揶揄されているようです。

また、子育て世代からは「独身貴族への税金負担を増やせ!たんまり搾り取れ!」などと迫害を受けることも多く、世間の風当りも冷たいと感じているようです。

アラフォーを迎えた高額所得者のイケメン社長A氏も、そろそろ自分の家庭をもちたいとは思いつつも、親の身勝手な離婚で子供が大変な思いをしたことが頭をよぎってしまい、結婚にはいまいち前向きになれないようです。加えて、万一、事業が傾くことがあった場合、自分一人の生活ならまだしも、母親や祖母の扶養のみでも大変な状況になってしまうため、なかなか大変なようです。

これがまだ、父子家庭の場合なら、年金収入の見込める父親の老後の心配などはそれほどありません。けれども、母子家庭の場合、離婚する際には、子供を成人まで扶養できるかどうかだけではなく、自分の老後の見通しもたたない状況であれば、将来的に子供の未来を犠牲にしてしまう可能性があります。

A氏によると、少子化問題がさけばれるなか、片親で親の扶養が負担になっている独身貴族へは減税のみならず、月10万円ぐらいの大人手当も導入するべきだといっています。